雷コラム

2024.01.23

雷ができるまで

雷の素は「静電気」

降水量の多い日本では、雷は身近な存在です。
雷は大気の中に溜まった静電気が放電される電気現象。放電の時に発生する大きな音が雷鳴、ぴかっと光る光が雷光です。雷の発生に必要なのは雷雲です。しかし、すべての雲で雷が発生するわけではありません。雲には、雷を起こす雲とそうでない雲があるのです。
地表でできた水蒸気のかたまりは、空高くあがって氷の粒になります。空では、高く上れば上るほど気圧が下がります。100m上空に行けば気温は約0.5℃下がるといわれています。積乱雲は時には成層圏にまで達することがあるので、夏でもマイナス数十℃の世界です。
氷の粒はぶつかり合いやこすれ合いを繰り返すことで静電気が発生します。この静電気が雷の基になります。静電気は雲の中に溜まり続けて帯電します。それが雷雲になるのです。
ちなみに、雷と関係の深い雲として「雷雲」「入道雲」「積乱雲」などの名称がありますが、この違いをご存知ですか? 積乱雲は気象用語、入道雲は積乱雲の俗称です。雷雲は雷を伴った積乱雲のことです。

プラスとマイナスの電気が発生

雷雲の中では、マイナスの電気をもった氷粒が雲の下の方に集まります。その影響でプラスの電気は雲の上の方に集まります。なにかを思い出しませんか? 磁石の構造とよく似ていますね。

雲と地表の電気が反応して雷になる

雲の下の方に集まった大量のマイナス電気の影響で、地表にはプラス電気が集まります。お互いに中和しようとして電気が流れます。これが「落雷」のしくみです。
ご存知の通り、電気はプラス極とマイナス極の間を流れます。本来、空気中では電気はほとんど流れません。雷雲では回りを囲む空気が絶縁体の役目を果たすので、雲の中には放電されない電気が溜まっていきます。小さな静電気が集まった雷雲の電圧は、驚くことに1億ボルト以上にも達するようです。
雲と地上の間で発生する放電を「対地放電(落雷)」といい、雲の中や雲と雲の間などで発生する放電を「雲放電」といいます。
これが、雷の正体です。

雷あるある

1.なぜ、落雷はギザギザに光るの?

雷がギザギザに見えるのはなぜでしょう。普通は通れない空気の中を無理矢理突き進んだ電気は、通りやすいところまで進んでは止まり、また通りやすい方向に進んでは止まりということを繰り返しながら地表に到達するためです。
落雷の瞬間は凄まじい量の電気が発生し、電気の通り道には強力な摩擦が起こります。その瞬間に発生した20,000〜30,000℃の摩擦熱が光っているように見えるのです。この光は「稲妻」とも呼ばれています。

2.雷鳴はどうして鳴るの?

雷がぴかっと光ってから、時間差で雷鳴が聞こえます。これは光と音の進む速度が違うのでおきる現象です。では、あのゴロゴロという雷鳴はどうして生まれるのでしょうか?雷鳴の正体は、電気の通り道で発生した摩擦熱の影響で、空気が一気に膨張したために発生した振動音です。
稲妻と雷鳴。この二つのメカニズムを知るだけで、雷のすごさがわかりますね。

3.雷から身を守る方法

雷鳴が聞こえるなど、雷雲が近づいている様子が感じられるときは、落雷が差し迫っています。これから述べる、いくつかの点に注意しながら、安全な場所にすみやかに非難しましょう。
1) 上空に雷雲があれば、海面、平野、山岳などの場所を選ばずに落雷します。雷は近くある高いものを通って落ちる傾向があります。また、グランドやゴルフ場、堤防や砂浜、海上などの開けた場所や、山頂や尾根などの高いところなどでは人の体に落雷しやすくなるので、できるだけ早く安全な空間に避難して下さい。
2) まずは、建物の中に避難しましょう。鉄筋コンクリート建築、木造建築、自動車(オープンカーは不可)、バス、列車などは比較的安全です。
3) 建物の中でも窓辺や壁付近は避けましょう。建物が落雷を受けた場合、コンセント→電化製品、配管→水廻り(浴槽・流し)などへ電気が流れる危険性もありますので、該当しそうな場所から離れて、部屋の中心部で待機しましょう。目安として、1m以上離れてください。
4) 近くに安全な空間が無い場合は、電柱、煙突、鉄塔、建築物などの高い物体のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れたところ(保護範囲)に避難します。高い木の近くは危険ですから、最低でも木の全ての幹、枝、葉から2m以上離れてください。姿勢を低くして、持ち物は体より高く突き出さないようにします。雷の活動が止み、20分以上経過してから安全な空間へ移動します。

雷の大きさはどれくらい?

数字でみる雷の大きさ

雷の電圧は通常1億ボルト以上だといわれています。家庭で使う電圧は100ボルトなので、その100万倍です。雷のエネルギーの見積もり方は様々ですが、10kWhから500 kWhとされています。これは、最大で一般家庭の電力使用量の50日分程度に相当します。
 このエネルギーは落雷時に、大部分が電波、光、音のエネルギーとして、大空いっぱいにまき散らされます。

国内の落雷発生状況

雷はいつ、どこで発生しているの?

2005年〜2011年の7年間に、気象官署から気象庁に届けられた落雷害の件数は932件。それによると、落雷害の約30%にあたる282件が8月に集中していました。
発生地域にも特徴がありました。落雷の発生地域の約60%が太平洋側、残りの40%が日本海側で発生しています。月別の発生状況では、4月〜10月は太平洋側、11月〜3月には日本海側での発生が多くなっています。
冬の落雷は、夏と較べると雷雲が比較的低空で形成されるので、高い構造物に集中して落雷する傾向が見られます。そのため、放電エネルギーが大きく、甚大な雷被害が発生する可能性が高くなります。

◆次に紹介する図はいずれも、日本列島を一辺20kmのメッシュ(=編目)で区切り、落雷発生数を集計したデータです。(2011年~2015年5年間)

図1「全国落雷密度マップ」/南東北から関東地方にかけての内陸部、中部・近畿・中国の内陸部、九州からトカラ列島にかけてのエリアが雷の多い地域となっています。
都市部のその周辺の人口密集地での落雷が多いという特徴がみられます。

図2「全国落雷日数マップ」/落雷発生の日数では、東北から北陸にかけての日本海側、山陰地域、九州~トカラ列島で多くなっています。
東北から北陸にかけての日本海側や山陰地域では、冬型の気圧配置時の日本海沿岸で多くみられる冬季雷が多く、雷による災害が多発しています。一方、九州南部~トカラ列島にかけての多雷日域は、低気圧及び前線通過時の落雷によるものと考えられます。